信じる心
05月13日
ダチョウ倶楽部の上島さんのエピソードで私が好きなのがあります。
ある日後輩が上島さんのボトルキープのお酒を全部飲んじゃって、驚かそうと代わりに水を入れました。
その後、上島さんがそのボトルを飲むと、なぜかベロンベロンになっちゃったそうです。
「あの人、水で酔っちゃったよ」
「あいつは酒の味なんかわかんねえんだよ」
「結局なんでもいいんだよ!」
劇団ひとりさんだか有吉さんだかがそんな笑い話をしてたのを覚えています。
「そう信じたら疑わない」そういう催眠効果みたいなものって人は持ってるんでしょう。
最近、これと似たような話を父から聞きました。
私の母の話です。
ウチの母は昔から外反母趾に悩んでいまして、これまでいろいろな薬などを試したが改善せず。
そんな中、最近、ある靴の中敷きと出会ったそうです。
その金額、なんとウン万円!
靴ではなくて中敷きがですよ。
父が止めるのも制してそれをポーンと買っちゃったそうです。
私は信じられませんでした。
そんなに高い中敷きが存在したこともそうですが、貧乏性の母が中敷きにそんなお金を払ったことに驚いたのです!
ひとしきり驚いた後、母の気持ちを考えると胸が締め付けられる気持ちになりました。
「よほど外反母趾に悩まされていたんだなぁ、さぞかし辛かったんだな…。」
金銭感覚なんて人それぞれです。
その人が納得すれば自分で稼いだお金なんて何に使おうと自由。
長谷川さんが大きな中古の駅の看板を買うのも自由。どさけんさんがボートレースにお金をつぎ込むのも自由。
本人が幸せならそれでよし。
ましてやコンプレックスとか病気などが改善するなら、財布のヒモなんて必要なし。
私だってお腹のぜい肉を安全に無痛で取り除いてくれるというならまあまあの金額を出す用意はあります。
故に靴の中敷きに大金を出した母を責める気にはならなかったのです。
さあ、そうしてゲットした高級な中敷きを、母は激安の婦人靴にセッティングしました。
いびつな金銭的価値を持った靴の出来上がりです。
一気に高級になった母の靴
以前私が買ったスニーカーを「高い」と言っていた母ですが、どっこい、そちらの足元の方が数倍ラグジュアリー。
「見えないところにお金をかける、達人のおしゃれ術」と言おうと思えば言えるのかな。
軽トラにフェラーリのエンジンを積んだみたいなアンバランス感が漂います。
ともかく私の母の足元コーデは大革新を迎えました。
それほどの価値を含んだ靴を履くとどこかに出かけたくなるのが人情であります。
「どこかへ連れて行って!」
父と一緒に、遠く益田市まで出かけました。
「歩きやすいわ~!」
「中敷き買ってよかった~!」
高いお金を出しただけあって、中敷きの効果は抜群。
足の痛みは全くどこ吹く風。
ルンルンでとてもよい一日になりました。
そして夕方、家に帰ってきました。
すると玄関で父があることに気づきました。
「あれ、お前の靴、こんなのだったっけ?」
「何で?そうでしょ!」
そう言って靴を見るとたちまち母の顔色が変わっていきました。
「あーーーー!!!これ私の靴じゃない~!!!!!」
益田で行った博物館が土足禁止でそこで違う靴を間違えて履いて帰ってきたのです。
量産型の靴だったばかりの悲劇。
色もサイズも同じような靴でした。
そう、中敷き以外は…。
すぐさま博物館に電話しました。
「靴間違えました。そちらで靴が届けられていませんか!?」
すごい剣幕だったはずです。
だって中敷き、すげー高いんだから。
幸運にも間違えられた人が靴を事務所に届けていたそうで、すぐに益田へ逆戻りすることを即決。
だってガソリン代とか比較にならないほど、中敷き高いんだもの。
再び車を運転させられる羽目になった父。
益田に向かう車の中で母にかなり嫌味を言いました。
「ずっと歩きやすいって言ってなかった?」
「あの中敷き、ほんとに必要だった?」
父がこの話を私にしている横で、母は「あ~ん、ばれちゃった!」と歯にかんでいました。
人の思い込みというのはいい加減なものです。
母の靴の中敷き。最近足の調子がいいそう。
それならよかった(笑)
ディレクター 松田