今週のおさらい。
04月30日
こんにちは。特に書くことはないのですが、まあどうにかなるやろうと書き始めることにします。
今週の放送は山田家本屋(周南)と長者ヶ森(美祢)にスポットを当てています。どちらも過去の偉い人の家という共通点がありました。
山田家本屋というのは毛利家の家臣で湯野をおさめた堅田家の家臣、山田氏の屋敷とのこと。
歴史の教科書に載らない人物ですが、そういう人たちの力で今日があることを忘れてはなりません。
よくタイムスリップもののドラマで織田信長の料理人をすることになったとか、坂本竜馬のけがを治療することになったとかいう話がありますが、おそらくタイムスリップしたとしても、そのような当時のトップの人物にそうやすやすと会うことはできないでしょう。うまくいったとしても毛利氏の家臣の家臣の山田さんくらいがせいぜいではないでしょうか。
例えばもし僕がタイムスリップしたら、タイムスリップした近くの家の住民に発見されるでしょう。
まずはその住民に好感をもっていただかなくてはならないので、未来から来た人間としての知識や技術を披露しないといけません。
たまたま取材中にタイムスリップにあったとして、カメラと一緒に過去にいけたなら、そこで映像を撮って見せて「なんと不思議な黒い箱じゃ」となり、住民の方に喜んでもらえるかもしれません。しかし「不思議な妖術をつかいおる」となればそこで捕えられておしまい。なんとか住民の懐に潜り込むためにいろいろな親切や手伝いを買って出て信用を築かなくてはなりません。
幾度もの村人との交流によって信頼関係を築くことに成功し、なんならその村の村長の娘あたりと恋におち、娘から村長さんに取り入ってもらう形で、どうにかこうにか村に溶け込んだところでようやく届け出によって、山田氏の耳に入り、「ちょっと呼んで参れ!」となることでしょう。
ここまででどうでしょうか。これは対人関係のうまさにもよりますが少なくとも半年、下手すると数年かかるやもしれません。
そしてようやく村長さんらから着物を仕立ててもらい、万全の態勢で山田さんの屋敷へ行き、山田氏に「未来から来ました」と申し奉るのです。しかしながら山田さんの度量によりますが「こやつおかしい」となったら、そこで切られておしまい。
少し興味を持っていただくことになれば「その黒い箱で奇術をみせい」となり、カメラを回すのです。
仮に山田さんに喜んでいただけた場合、ここからは話は割とスムーズにすすむかもしれません。山田さんの発言力はきっと村人のそれとはくらべものにならないほど大きいからです。
次は山田さんの上司の堅田さんに「奇術」を見せることになります。山田さんのおかげでさすがに浮浪者あつかいはされず、このころになれば髪も伸び、ちょんまげのひとつも結えるようになっているので見た目はもう当時の人と遜色なくなっているのです。
無事に堅田氏に喜んでもらうことに成功し、ようやく毛利のお殿様に披露させてもらうことになりました。期日は1か月後、毛利の殿様が参勤交代で江戸からの帰り道に湯野に立ち寄られる時と決まりました。その時に殿様の一行が山田家の屋敷に立ち寄るのでお披露目の時間を少しもらえることになったのです。
毛利の殿様にお会いできることになった私は家に帰り、ささやかな宴を開くことになります。村長の娘から「お疲れ様」とお酒を注がれ、その父からは「わが村の誇りじゃ。」とさらには「娘の婿になってくれんか」と懇願され、お殿様との会合後に祝言をあげることになりました。娘の頬は少し赤くなり少し下を向くのです。
幸せな時間はあっというまに過ぎ、いよいよ当日。披露するのは山田家の茶室で行われることになりました。たくさんの家臣団を従え、刀を預けた毛利さんとその直参の部下数人が上座にすわりました。
とうとうその時が来たのです。タイムスリップしてここまでに数年。すでに大切な人も友人もでき、私はこの時代で生きていくことを決心していました。そして苦労が報われ、当時の最高の権力者、毛利の殿様に拝謁するところまでやってきたのです。
いろいろな思いが頭の中を交錯する中、レンズを殿様に向け、RECの赤いボタンを押したその時、事件は起こったのです。
カメラが動かないのです。私の人差し指は、何度も何度も赤いボタンを突きますが、一向にカメラは起動しません。
…そう、カメラのバッテリーが切れたのです。ここまで何度も何度も「奇術」を披露してきた、カメラのバッテリーはもう限界だったのです。
何度もスイッチを押したりしているうちに「どうしたのじゃ」としびれをきらした殿様の部下が言い出します。堅田さんも自分が進言した手前「早く奇術を見せぃ」とせかします。しかしカメラは動きません。
このままでは私は稀代のペテン師になってしまいます。山田さんにも堅田さんにも迷惑がかかってしまいます。家では村長の娘が僕の帰りを待っています。
私はもう引き返せないところに来ていたのです。
動かなくなったカメラを左手に抱え、私は最後の賭けに出ます。
素早く身をかがめ、茶室の刀隠しの引き出しをあけ、右手で刀を取り出し、サッと殿様の背後から刀を首元に当てました。
「殿様を殺されたくなければ下がれ」
まさかの乱心に戸惑う家臣をかき分け、殿様を人質に私は村へ戻り、彼女を引き連れ港へ向かいます。
私の行動に戸惑いながらも意を決し、村長の娘もついてきてくれました。
そう、彼女のおなかには私の子供がいたのです。
港までやってきた私は、殿様を使って、脅しながら一隻の船と船頭を手に入れます。船が岸を離れ弓が届かなくなったのを見計らって、殿様を解放します。
「すみません。お殿様。本当はこのカメラは動くのです。ただし今はバッテリーなる部品が底をついてしまい、殿様に奇術をお見せすることができませぬ。」
殿様は落ち着きを取り戻し、さらに私の話を聞きます。
「時間をください。きっとカメラのバッテリーを元に戻し、カメラを映して差し上げます。ですのでしばし暇を戴きます。」
殿様は私の目を見ながら「わかった」と一言。
浮き輪とともに殿様を海に落とし、私は船頭にこう申すのです。
「おい!船頭!とりあえず南アメリカのボリビアへ行ってくれ!!」
そう、ボリビアはバッテリーの原料のリチウムの世界一の産出量を誇っている国なのです。
…一層の船は、徳山から瀬戸内海を飛び出し、太平洋へ舵を漕ぐのです。
カメラのバッテリーを手に入れるために。 (続)
…山田家本屋。刀隠しの引き出しや、隠し部屋の存在が、ロマンを掻き立てます。
http://www.city.shunan.lg.jp/section/ed-sports/ed-shogai-bunka/bunkazai/yamadake.html
書くこと決めずに書きはじめるとこのありさまです。
ディレクター 松田大輔