ママ打ち合わせ
05月10日
先日放送したスナックミコトのママのOAを見て、とある一人のママから「出てもいいわよ。」連絡を頂き、さっそく打ち合わせに行ってきました。
そのママのお話がとても印象的でしたので、ご報告いたしますね。いずれ放送することになるでしょうけど、待ちきれず。
ママをされてるその女性は63歳。現在は小料理屋さんをしていますが、60才まではラウンジのママも兼務されていました。
とてもチャキチャキして、いかにもやり手だという印象があったので、”才能でママになった”のだと思い話を聞いていると、実は”努力型のママ”だということがわかりました。
ママが水商売の世界に入ったのが23歳の時。当時、昼間は幼稚園の先生をしていましたが、母子家庭で病弱な母親の面倒をみないといけないという事情で、夜もスナックで働くことにしました。昼の仕事上、目立つ仕事ができないためホステスではなく、裏方のスタッフとして働き始めたそうです。
「その裏方の仕事がつらかった」とママは語ります。きれいにマスカラをつけた大きな目を閉じながら。
裏方の仕事は、お客さんの飲み物や食べ物を作ってホステスに出したり、お店の掃除やおしぼりの準備・皿洗いなど、ありとあらゆる雑務をこなします。
幼稚園の仕事の後の疲れた体で、きっと同じ年くらいのホステスに指図されたりしながら。肉体的・精神的に苦労があったことは想像に難くありません。
今と違い、当時のお客さんはお酒の飲みかたも豪快でした。そのためトイレで戻すお客さんが多かったそうです。当然その処理も裏方だったママの仕事。
「トイレの便器に吐く人はまだいいのよ。問題は間に合わずに手洗い場で吐く人がいてね…」
トイレの惨状を見つけたママは、汚物をかたずけるためビニール手袋を探しました。すると当時のマスター(男性)から大目玉を食らったそうです。
「ばかやろう!それは素手でかたずけろ!」
「だって…汚いじゃないですか…」
「その気持ちはわかる。わかるけど俺たちはお客さんにお酒を飲んでいただいたお金で暮らしてるんだ。
だからそのお客さんが飲んで失敗した物を汚いと思ってはいけない。感謝の気持ちを持っていればビニールの手袋なんていらないはずだ!」
マスターの言葉が心に響いたママは、以来お客さんが手洗い場で失敗しても必ず素手で片づけました。失敗をしたお客さんからは感謝され、ホステスではなく裏方のママにチップをくれることもあったそうです。
「不思議な事に何度もやってると慣れてきて、このお客さんは、すき焼き食べたとか刺身食べたとか、分析できるまでになってきたのよ。」
ママはそう言って笑います。
「人生に無駄なことは何もない。私はマスターにお客さんへの感謝の気持ちを学んだの」
その後ママは、夜の仕事がばれて昼間働けなくなったため、裏方から収入の多いホステスへ転向し、夜の仕事一本にしぼります。昼間にできた時間はお客さんを喜ばすため習い事に充てることにしました。
生け花・茶道・着物の着付け・三味線・書道、ありとありゆる芸事を学びました。
その後、独立しラウンジのママとなり、現在は小料理屋さんを営む日々。
その小料理屋さんの看板には「営業時間:朝10時~翌深夜1時」とあります。
63歳、いったいどれだけ働くんですか?と尋ねると
「人の3倍努力しなきゃだめよ!」
そう言ってタバコに火をつけた途端、入り口のドアが開きお客さんが入ってきました。
「いらっしゃい!」と言うと同時に、素早くタバコを灰皿に押しつぶして、小走りでキッチンへ回るママ。
この日の打ち合わせ、まるで一本の重厚なヒューマン映画を見た後のような気分でした。ママへのスタンディング・オーベーションは数日がたった今もなお僕の中で続いています。
汗と努力で彩られたママの人生経験がつむぐ言葉の結晶。撮影は来週の水曜日。放送日は未定。ぜひごらんください!
ディレクター 松田大輔
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